先般壱岐(長崎県)へ出張した際、原の辻(はるのつじ)遺跡の復元建物工事現場を見学させていただく機会に恵まれました。
いずれもなかなか見ることが出来ない誠に興味深い仕事でしたので是非ご紹介したいと思います。
下の植栽は一見何の変哲も無いものですが、工事で剥ぎ取った表土を別の場所へ保管しておき、再び元へ戻すことで植生保存を図った結果なのだそうです!
もともと土中に含まれていた様々な種が自然に発芽したとのことですが、このようになるのであれば、下手に芝を張ったりするよりも、ずっと自然でよいですね。
竪穴式住居の架構が組み上がった状態です。
別の建物の竪穴がちょうど施工中だったので、工事手順をご説明しましょう。
住居の竪穴部分は、方形の型枠を設置して周囲に改良土を締め固めて作ります。版築に近いですね。
下がその型枠の内側。
型枠が土圧で内側へ倒れぬようパイプで突っ張っているのが分かります(黄色い箱状のモノは棟持柱の掘立て穴部分)。
下が型枠の外側に土を入れ締め固めた様子。
コンクリート打放しに用いる塗装合板型枠が用いられていました。
型枠を外すと、四角くエグられた竪穴が出来る次第。この後、遺構の形に忠実に土を削り取ります。
続いて茅葺き工事の様子を見学。
「茅」とは屋根に葺く草の総称。この現場ではススキが用いられています。
原の辻遺跡の復元建物では、「逆葺き(さかぶき)」という穂先を下にして葺く構法が採用されています(韓国に類似例が多い・注1。下写真は2006年夏に撮影した別の復元住居)。
ただしこの構法は雨が漏りやすい為、見えない部分は穂先を上にする通常の方法で葺くそうです。
横に走っているのは女竹で、これと母屋(もや・小屋組の一部材)とを藁縄で結び、茅が風で飛ばされるのを防ぎます。
茅から飛び出している木は、屋根の厚みを確認する為の道具だそうです。
下は軒先の茅の小口をたたいて揃える道具。裏側は長年の使用により、うづくり(注2)状態になっていました。
何もかもが実に面白く、且つ、とても勉強になりました。
(注1)優れた参考文献として「草家―韓国の人々の暮らしとかたち」(2006年 ワールドフォトプレス)があります。
(注2)「うづくり」とは板等を茅でこすって木目を浮き立たせた仕上げ。天井板などに用いる。