建築家・吉田五十八(1894~1974)は、20世紀における伝統的日本建築の変革者でした。
主として住宅建築において、伝統的要素とモダンなそれとを融合した新しい座敷の形を創出し、その形は当時の誰もが共感するところであったがゆえ、瞬く間に全国へ波及しました。
現代和室の雛形は吉田作品と言って差し支えないのではないでしょうか?(本人は下手な模倣をされて困ると「饒舌抄」で述べています)
吉田は社寺建築においても、現代建築として如何にあるべきかを模索しました。
写真は満願寺です。
中国や朝鮮のそれと異なる我が国特有の緩やかな軒反りを主たるエッセンスとして継承する一方、仏教伝来以降外来の形ほぼそのままに保持されてきた組物を排し、モダニズム建築同様外部に構造を表出しています。
現代の我々から見ると、優美で軽やかな屋根と鉄筋コンクリート造ゆえの野太い柱梁を持つ軸部とがいささかアンバランスに感じられますが、当時としては斬新且つ先鋭的な試みであったに違いありません。