映画「転校生」と尾道

「転校生」は、監督:大林宣彦、主演:小林聡美、尾美としのり、による映画です。
私が高校2年生の春のこと、友人のK君から「無料招待券があるから」と誘われ、なんの期待もせずに見に行きました。
ところが上映終了後、私は感動のあまり席を立つことも出来なかったのです。
家に帰ってもなんだか落ち着きません。当時大好きだったテレビ番組「俺たちひょうきん族」も上の空で眺めていました。
観たい、また観たい…。
結局、翌日もお金を払って映画館へ入ることになりました。
以来、友人を半ば脅迫して映画館に連れ込むことに情熱を注ぎ、何十回観たことでしょう。犠牲者はかなりの数にのぼる筈です。
この映画を観たおかげで、高校生の間、なんとなく楽しい気持ちで過ごすことが出来ました。
映画というのは凄い力を持っているものなんだ、と思い知らされた最初でもあります。
以来ずっと、小林聡美さんが私の憧れの女性です。

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さて、この映画の何が私を感動させたのか、正直良く分かりませんでした。
でも尾道へ行きたい、行かねばと思いました。
当時の「キネマ旬報」に「画面に溶けてしまいたくなった」という論評が載っていましたが、私もまさにそう思ったのです。
高校2年生の夏、初めての一人旅でした。
新幹線で福山に着いて、ここから尾道までは普通列車に乗り換えです。
福山城のシーンもあったことだし寄ってみるか、と駅を出ました。
おそらくここが撮影場所だ、と思われる所へ行くと、ひとりの男が佇んでいます。
「邪魔だなぁ、早くどこかへ行ってしまえ」
などと思いつつ彼が去るのを待っていると、その男が話しかけてくるではありませんか。
そして話をするうちに、困ったことに彼が私と全く同じ目的で尾道を目指す旅行者であることが分かりました。
彼は私より少し年上で、ちょっと根暗そうな人でした。
でも話が合わない訳がなく、その後3日間も仲良く一緒に行動したのです。
一人旅ではなくなってしまいましたが、楽しく懐かしい思い出です。